活用事例 Case Studies
2023年09月27日
NEC ー Climate Visionの分析結果をTNFDレポートに活用
本記事では、海外拠点の洪水リスク分析・気候シナリオ分析)を行い、国内IT企業初の TNFD レポートの発行を行われたNEC(日本電気株式会社)様の活用事例を紹介します。ご担当頂いたNEC環境・品質統括部 環境戦略企画グループ 岡野 豊様に、Gaia Visionの気候リスク分析プラットフォーム(Climate Vision)をご活用頂いた背景や、情報開示レポート発行のインパクトなどについてお話をお聞きしました。
タグ:上場企業、製造業、IT、TNFD、CDP
サマリ
背景・課題
- 海外を含めた拠点における洪水リスクの定量的な財務影響評価が困難
- CDPやTNFDなどの気候変動関連のリスクの情報開示に対する共通認識醸成の難しさ
ソリューション・Gaia Visionを採用した理由
- Climate Visionにより現在気候及び将来気候におけるリスクを定量化し、洪水リスクの財務影響評価を実施
- 海外のツール(Aqueduct)も利用していたが、より詳細なシミュレーションのできるソリューションを探していた
- 国内のみの対応にとどまる会社も多い中で、海外拠点の分析に対応している点・浸水深/財務影響両方の観点で定量評価できる点が優れていた
インパクト
- 洪水リスクが定量評価され、社内外に対して説得力のある説明が可能に
- IT業界として初めてTNFDレポートを公表し、メディア掲載や外部からの問い合わせなど、様々な反響を得た
背景・課題:洪水リスクの定量評価が社内外で求められる中で、特に海外拠点のリスク分析が困難だった
NECは、中長期の環境目標として、2017年に「2050年を見据えた気候変動対策指針」を、2021年には「NEC環境ターゲット2030」を策定しました。未来に向けて、自社の環境負荷やリスクの継続的な低減と事業を通じた貢献の拡大に取り組んでいます。
その中で、世界で深刻化する水不足、水質汚濁、洪水などに対する水リスク管理も進めており、水不足、水質汚濁、気候変動に関連した洪水などの水リスクが当社グループの各生産拠点やサプライチェーンにどのような影響を及ぼすかを評価・確認を進めています。具体的に洪水リスク分野においては、世界資源研究所(WRI)が提供している水リスク評価ツール「Aqueduct」や自社独自の水リスク管理アンケートをもとに、国内外の各生産拠点でどのような洪水リスクがあるのか調査していました。
しかし、世界中にある拠点における洪水による物理・財務リスクについて、社内外から定量評価が求められる中、既存のツールでは不十分でした。より海外拠点も含めて詳細かつ定量的なリスク分析を実施可能なツールを必要としていました。また、CDPやTNFDなどの情報開示を行うにあたって、経営層や現地生産拠点など、社内の関係各所との合意形成も課題でした。情報開示の重要性などの我々サステナビリティ部門にとっては当たり前のような前提も丁寧に共有し、共通認識を得ていくことが重要だと考えていました。
ソリューション・Gaia Visionを採用した理由:
Climate Visionを用いた洪水リスク評価を実施・海外でも詳細かつ定量的に分析できることが決め手
こうした水リスクに対する定量的な物理・財務リスク評価のためにNECが導入したのが、Gaia Visionの洪水リスク評価プラットフォームであるClimate Visionです。Climate Visionは、現在気候及び将来気候シナリオにおいて、気候学的な観点から海外の拠点を含めた洪水による物理・財務リスクを定量評価が可能なサービスです。
これまで海外のツール(Aqueduct)も利用していましたが、解像度の粗さなどから実感と合わない部分もあり、より詳細なシミュレーションを行いたいと考えていました。また、国内の会社は国内の分析にとどまることも多い一方で、海外に多くの拠点を持つNECとしては、海外での分析に対応できるソリューションが必要でした。
その中で、Climate Visionは、「海外での分析」「詳細かつ定量的な分析」「浸水深・財務影響評価両方に対応」できる優れたソリューションであると考えました。Climate Visionを活用することで、気候科学的な根拠にもとづきながら、様々な気候シナリオごとに定量的にリスク評価を行うことができました。これは、説得力を持つ情報開示や社内での具体的な対策の検討において非常に有用でした。実際には、机上の評価だけで現地の洪水リスクを深く理解することはできず、地域の水環境や拠点の運営方法などについて現地の担当者とのヒアリング等により理解を深めることも必要です。従って今後さらなる取組も求められますが、それでも出発点としてシミュレーションで解像度高くリスクを理解できることには一定の意義がありました。
また、この財務リスク評価については、対象となる拠点の資産情報などが必要となりますが、これはなかなか社外に公表できないものです。そこで、当社の方で財務情報を入力すると自動的に財務リスクが算出できるようなExcelを納品して頂いたのも非常に助かりました。
さらに、この結果をCDPやTNFDなど対外的に公表するため、社内での合意形成に向けた資料作成のサポートをしていただきました。その資料内では、Climate Visionによる物理・財務リスク評価の解説のみならず、そもそもなぜCDPやTNFDなどの情報開示が必要であるかその意義やメリット、また他社における情報開示の事例など、前提情報の説明を含めた丁寧な資料を作成いただきました。
インパクト・今後に向けて:国内IT業界初でTNFDレポートを発行し、大きな反響を得る
Gaia Visionのサービスを利用したことで、洪水リスクについてより詳細で説得力のある評価を行うことができました。また、資料作成支援などによって、CDPやTNFDなど対外的な情報開示に向けて円滑に社内の認識合わせを行うことができ、迅速に対外発表を行うことに繋がりました。
実際にNECは2023年7月に、このClimate Vsionによる洪水リスク評価の結果を含む、TFNDレポート「NEC TFNDレポート 2023」を発行しました。国内IT業界の中では初のTNFDレポートの発行となり、メディアで取り上げられたり、他社から問い合わせを受けるなど、大きな反響がありました。
今後も、Gaia Visionとの協業を通じて、気候変動関連の物理リスクの深掘りや、対外的なサービス開発の可能性の探索を行い、この分野において業界をリードしていきたいと考えています。
企業情報
NEC(日本電気株式会社)
- 業種:IT、製造業
- 本社所在地:東京都港区
- 主な事業内容:ITサービス事業、社会インフラ事業
- 従業員数(連結):118,527名(2023年3月末日時点)
- 売上収益(連結):3兆3,130億円(2022年度実績)
NECはお客さまをはじめとしたさまざまなステークホルダーのみなさまとともに「未来の共感」を創り、デジタルの力を最大限活用して、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現に取り組みます。真にオープンで、真に信頼できる「Truly Open, Truly Trusted」な世界を実現することを通じて、持続可能な開発目標「SDGs」の達成にも貢献してまいります。
お話をお聞きしたご担当者様
NEC 環境・品質統括部 環境戦略企画グループ 岡野 豊様
まとめ(Gaia Visionより)
今回は、Climate Visionを活用して、海外拠点を中心に洪水リスクや気候変動影響の評価(気候シナリオ分析)を実施したNEC様にお話をお聞きし、記事化させていただきました。
NEC様は、気候変動や水セキュリティに関する先進的な取り組みによりCDPから最高評価「Aリスト」企業に4年連続で選定される(2022年12月時点)など、サステナビリティに関して社外からも高く評価されています。また「NEC 2030VISION」で「地球と共生して未来を守る」を掲げ、脱炭素をESG視点の経営優先テーマ「マテリアリティ」の一つとして位置づけています。2025中期経営計画に取り組む中で、脱炭素社会の実現、地球温暖化への対応、水・食の安全に貢献するソリューション提供にも務められています。
こうした中で、特に海外拠点の洪水リスクの分析や気候変動影響の評価についてご関心頂き、Gaia Visionの気候変動リスク分析プラットフォーム「Climate Vision」をご利用頂きました。Gaia Visionの洪水シミュレーション技術は、グローバルで一元的に高解像度なリスクシミュレーションを行えることが強みであり、NEC様のニーズに適合した形でプロダクト・サービス提供を行うことができたと考えています。
実際に、本分析結果も活用して、TNFDレポートを発刊されました(NEC TNFDレポート2023 / P11 )。国内IT企業初の発刊であったこともあり、多くの反響があったとのこと、Gaia Visionとしてもありがたく思います。
今後とも、グローバルでのリスクマネジメントなどを通じて、NEC様の気候変動に対するレジリエンスの向上や外部からの信頼獲得に貢献していきたいと考えております。
もしご不明点などがございましたら、お気軽に資料請求・お問い合わせいただければと思います。
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